WhirlWind

相乗りの代償は


どれだけ。
どれだけ逃げ場をつぶせば、この相手は手元に転がり落ちてきてくれるのだろう。
出会ったときから、既に退路などなかったはずなのに。
戦いを重ねていくたびに、一つ、また一つと逃げ場を失っているはずなのに。
いつも何かしら、逃げ道を、口実を見いだしては、するりとこの手からすり抜けていく。
探偵としての自分に揺らぎ、ダブルとしての自分に揺らぐ。
自分が何もかも請け負うことで、傷つくことで、周りを守ったつもりになっている。

守っているつもりならば、守られてやろう。
欲しがりで、寂しがり屋で、誰よりも自分に自信がない君の、僅かな矜恃を守ってやれるのなら、
それくらいのこと、大したことではないのだ。
庇護される側に甘んじることなど訳はない。
僕ならいくらでも満足させてやれる。
でも翔太郎、君は早く気づくべきだ。
君が契約した相手が何者なのかを。


今も時折、視界の端にちらつく、白をまとった男。
名前をくれた人。生き様を示してくれた人。
彼に名前をもらって、僕は「人」になった。ただし半分の。
あの人を失ったときの、君の叫び声が今も耳の奥で響いている。
まるで身を引き裂かれるような、その悲痛な声を聞いたときに、僕は手を伸ばさなくてはと思ったんだ。
たとえそれが仕組まれていたものだとしたって、
いや、偶然が重なっただけの意味のないものだとしたって。
僕が見つけたんだ、君を。
君の存在を手に入れて、僕は初めて一個の「人」になれた。
僕が選んだ。
僕はあの時からとっくに覚悟を決めているのに。
ビギンズナイトを終わらせることは出来ない。
僕たちは二人で一つ。己の、そして互いの罪を数え続ける。
今、君の隣にいるのは他の誰でもない僕で、そして君は僕以外を選びようがないのだから。
だから翔太郎。

早く諦めて落ちてくればいい。

- end -


2010/05/16 up
32話の翔太郎の、あまりにも控えめな反応にもだもだして書いた初書きダブル。
▲top